『翠雨の一粒』 – 2026年6月定期便

『翠雨の一粒』

BOX

2026年6月定期便

購入

梅雨にひらく、季節の記憶。

灰色の空の下、一粒の雨からひらく記憶

梅雨の雨は、心を少し内側へ向かわせます。

湿った土の匂い。
胸の奥に落ちる雨音。
ふいに戻ってくる、遠い日の記憶。

「翠雨の一粒」にて表現したことは、雨の美しさだけではありません。

泥に濡れることを誇らしく思った幼い頃。
栗の花の匂いと、祖母の声。
梅仕事の傍らで、少しずつほどけていった心。
雨上がりの光に感じた、夏の気配。

雨が静かにすべてを包みながら、確かに何かを芽吹かせている。
その感覚や記憶を、一粒のショコラに映しました。

一粒は、物語とともに。もう一粒は、素材とともに。

今回お届けしたのは、「薫木」「墜栗花」「露茜」「青薫」の四つの味わい。

溶け合い広がる、木と香辛の深い余韻。
静かな奥行きの先に漂う、ほのかな花の気配。
透き通る酸味の奥にひらく、やわらかな甘み。
雨上がりを思わせる、青く澄んだ香り。

それぞれの箱には、同じショコラを二粒と、使用した素材を収めました。

最初の一粒は、各ショコラに付属してお届けする物語を読みながら。
ショコラに使用されている素材を知る前に、脳裏に浮かぶ景色や、自分の内に静かに眠っていた記憶に浸っていただけます。
もう一粒は、味わいの構成を記したカードを読みながら。
香りや味の背景を知ることで、最初には見えなかった輪郭が、静かに立ち上がります。

同じショコラでも、ひらかれる景色は少しずつ違う。その違いを味わえることもまた、この定期便に込めた大切な時間です。

雨の日に感じる憂鬱も、記憶に残る寂しさも。
その奥にある、雫の光や、ほのかな甘み、まだ見ぬ季節への小さな高揚も、そのままに。
今月の一粒が、梅雨にまつわる皆様の記憶をそっと開くものであれば、うれしく思います。

in The Box

薫木

憂愁の陰りをまとう
梅雨の雨


草木の匂いが立ちのぼる、湿り気を帯びた裏山。
ひとり、ゆっくりと奥へ入っていく。
雨粒が肌に触れるたび、わずかに体温が奪われる。
傘も差さずに濡れることの、理由のない解放。
叱られると知りながら、ぬかるみに足を踏み入れる。
沈む靴底、跳ね返る泥。
汚れていくほどに、どこか誇らしくなる心。
名前のない衝動のままに、
自分の輪郭を確かめていた、幼い頃の記憶。
雨は静かにすべてを包み込みながら、
確かに何かを芽吹かせていた。

使用素材

・アブラチャン

・ネズミサシ

・クローブ

・薫木水

墜栗花

胸に落ちる
心地よい雨音

梅雨入り前、ふと漂う、湿り気を帯びた匂い。
わずかな不快さとともに、足を止めてしまう気配。
「これは、栗の花の匂いでよ」
静かに重なる祖母の声に導かれるように
梅雨になると、無意識にその香りを探してしまう。
見つけた瞬間、湿った空気も、曇った空も、
すべてがあの頃の情景へとつながっていく。
胸の奥に、ぽつりと落ちる雨音のように。
やわらかく、確かに響く記憶。
けれど同時に、
その記憶が少しずつ書き換わっていくことへの、
言葉にならない寂しさも残っている。

使用素材

・栗の花の蜂蜜

・はったい粉(麦こがし)

・オーツミルク

・アマレット

露茜

そっと
開き始める

馴染めない空気、溶け込めない不器用な自分。
微かな苦味となって、胸の奥が少しだけ痛む。
この時期は、家族で梅仕事をしていた。
庭の梅と、畑で採れた赤紫蘇、塩を重ねていく。
やがて生まれる、強い塩気と、鋭い酸味。
思わず顔をしかめるほどなのに、
次の瞬間、やわらかな甘みと、
ふわりとひらく華やかな香りが訪れてくれる。
自然は何も語らずに、ただ隣にいてくれた。
痛みの奥に、別の気配があるということを伝えて。
閉じていた心が、わずかに、ほどけはじめる。
内側から、そっと、開き始めている。

使用素材

・露茜(梅とスモモの交配種)

・ジャスミン

・ライチ

青薫

優しく煌めく
翡翠のよう

雨上がりの空に、ほのかにひらく光。
瑞々しい新緑の葉は、屈折したきらめきをまとい、
ひとひらずつ、翡翠のように息づいている。
梅雨の終わり、湿り気を残した風のなかで、
季節がゆっくりと夏へ傾いていく気配。
夏が好きだと、ふと胸の奥で確かめる。
これから訪れる光や匂い、温度までを先回りして、
まだ見ぬ景色に心がほどけていく。
期待はやわらかく膨らみ、
触れる前から、すでに始まっている高揚。
静かに弾ける、透明なワクワク。

使用素材

・メイチャン

・ベトナムカカオ

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